2008年12月23日
歴史を作ってきた男たちの惜別の宴:網孝弘
12月6日、「カープOBオールスターゲーム」が広島市民球場で開催された。山本浩二氏や衣笠祥雄氏、大野豊氏らのプレーに大観衆は酔った。今季限り本拠地の役割を終えた市民球場。ファンも別れを惜しみ、往年の名選手たちも惜別の思いにかられた。
「チームカープ」の先発としてマウンドに上がったのは外木場義郎氏。1イニングを二ゴロ、一飛、空振り三振と完ぺきに抑えた。。68年9月14日の大洋戦で完全試合を達成。72年の4月29日には巨人相手に無安打無得点試合をやってのけた。舞台はいずれも市民球場だった。
「完全試合の時は、オーナーをはじめいろんな人からお祝いの言葉をもらってね…。巨人戦のノーヒットノーランは、王さん、長嶋さん相手にできたのが最高だった。巨人はV9のまっただ中。強いチームだったよ。王さんにカウント2-3からカーブを投げて『ストライク』と思ったら判定はボールだった。よく覚えているよ。記録よりも勝負という感じでしたね」。“健在”ぶりにスタンドを埋めた2万8000人は拍手喝采。「私はこの球場に育てられた。寂しい」。大投手はポツリとそう言った。
「江夏の21球」を導き、79年に初の日本一を演出した名捕手、水沼四郎氏。79年の日本一は大阪球場で決めた。翌80年の連続日本一は市民球場で決まった。その時もマウンドには江夏。水沼氏はマスクをかぶっていた。
「79年も80年も最後は江夏。あの21球は生涯忘れられません。(80年の)市民球場での第7戦はファンの声援がものすごくてね…」。水沼氏は昨年5月24日、脳梗塞で倒れ、3カ月半入院。右半身が麻痺した。現在もリハビリ中だ。「腕が上がるようになったんですよ」。6日のOB戦を励みにリハビリに取り組んできたという。「楽しみにしてきた。リハビリに力が入りましたよ」。試合には途中から出場した。
2215試合連続出場の大記録を樹立した鉄人・衣笠祥雄氏。試合前には本塁打競争でスタンドを沸かせた。軽快な三塁守備でも魅せた。衣笠氏の一番の思い出は初優勝だという。
「75年の10月15日に優勝が決まった。僕は11年目でした。10月19日に初めてチャンピオンフラッグが広島に来た。入団した頃は、そんなものが来るとは誰も信じていなかった。ファンも熱望していたけど、本当にそんな日が来るとは…。それから『勝てるんだ』と確信したような気がします。新しい時代が始まったと感じました」。
山本浩二氏はOB戦の7回、ライナーで右前に運び、ファンを喜ばせた。首位打者1回、本塁打王4回、打点王3回…。通算536本塁打。監督としても91年の優勝を導いた。ミスター赤ヘルは本拠地への思いを静かに語った。
「いい時も悪い時もここだった。思い出は全部。ありすぎるよ。あえて言うなら自分のタイトルとかではなく、優勝だな。ここでビールかけをやったことは今でも鮮明に覚えている」
市民球場の公式戦ラストゲームは9月28日のヤクルト戦だった。6日のOB戦は、歴史を作ってきた男たちの惜別の宴だった。現役、OB、ファン、関係者…。数え切れない思いを背に、市民球場は、51年間の歴史に幕を下ろした。
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