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2008年6月17日

大島「スローカーブを、もう一球」:網 孝広

 故・山際淳司氏の著作に「スローカーブを、もう一球」という名作がある。群馬県立高崎高校が81年のセンバツに出場するまでを描いた作品だ。高崎高校といえば福田赳夫(故人)、中曽根康弘元首相の出身校。県下有数の公立進学校の快進撃を支えたエース。彼の投げるスローカーブに焦点を当てたノンフィクションは、ボールの緩やかな軌道そのままに、発表から25年以上経っても色褪せることなく書店に並んでいる。

 今季、広島の投手でスローカーブを巧みに操っている左腕がいる。5月3日に1軍に昇格した大島だ。5試合で防御率は3・52。今季初先発となった5月28日の西武戦では強力レオ打線相手に5回2失点。篠田が18球で降板した6日のオリックス戦では緊急登板のロング救援で4回1失点。成績は0勝2敗だがチームに貢献している(成績は16日現在)。
 その大島の直球は140キロ前後。130キロ台後半が多く、本格派ではない。スライダー、チェンジアップは120キロ台。カーブは極端に遅く、時には90キロ台を計測する。「スローカーブという意識はないんですけどね。去年よりも多く使っています。1軍に上がってからより遅くなった気がする(笑)」。
 中日戦ではウッズに対し、カウント1-1から105キロのカーブで1-2、4球目は137キロ直球で2-2。最後はチェンジアップで三ゴロに仕留めた。和田には136キロをみせた後、107キロで三邪飛。中村紀には5球のうち4球が直球で、間に104キロのカーブを挟んだ。結果は139キロを三邪飛。見事な“緩急術”だった。
 西武戦ではクリーンアップを6打数無安打。ここでもカーブを有効に使った。中島、ブラゼル、G・G佐藤に対し投じた計22球のうち7球がカーブ。「使いどころを間違えると危ない球。でも初球とかは振ってこない。スローカーブはコースより高さ。真ん中でも高さがよければ打たれない」。
 待たれる恐怖感はないのだろうか。緩い球ゆえ、打者のヤマが当たればフルスイングされてしまう。「投げる時に『ちょっと怖いな』と思う時はありますよ。でも勇気を持って投げる」。緩急ならぬ“敢球”が打者のタイミングを外している。
 「あの球で空振りをとろうとか思ってないです。でも、うまく使っていければ」。大島の昨季登板は1試合のみ。白星は05年までさかのぼらないとない。このまま1軍に定着するために-「スローカーブを、もう一球」と思わずつぶやいてしまいそうになる。


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カープ担当記者日記
網孝広(あみ・たかひろ)
 1972年、大阪府堺市生まれの35歳。入社後広告局に7年、編集局整理部(レイアウト部門)に3年半在籍。06年11月広島総局に赴任。34歳で初めて「新聞記者」になったオールドルーキー。Jリーグ、高校野球、高校サッカーなどの担当を経て07年9月よりカープ担当に。08年の予想順位はエールを込めて3位。まだまだ独身。
柏原誠(かしはら・まこと)
 1977年、長野市生まれの29歳。アマチュアスポーツ全般、Jリーグ、オリックス、阪神担当を経て06年1月からカープ担当。好きなブラウン語録は「ユニホームの後ろ(個人名)ではなく胸のマーク(チーム名)のために戦え」。07年の予想順位は希望込みで中広巨神横ヤ。ちなみに昨年の予想は中神巨広ヤ横と惜しかった。幼少時からG党で原辰徳、松井秀喜のファンだったが熱はすっかり冷めた。家族は妻と男児2人。

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